大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(レ)676号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕被控訴人は控訴人に対し昭和三三年六月二六日から本件木造瓦葺平家建居宅建坪一二坪の家屋を賃料一カ月一、〇〇〇円と定めて賃貸したが、控訴人が右同日以降の賃料を支払わなかつたので、昭和三七年七月二日延滞賃料合計四八、一六〇円を三日以内に支払うよう催告し、かつその支払がないときは賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし、これにより本件賃貸借が終了したとして本件家屋の明渡と延滞賃料、損害金の支払を求めた。控訴人はこれに対し、本件家屋補修のため、昭和三三年に二六、六〇〇円、同三四年に五〇、〇〇〇円、同三五年に三、〇〇〇円、合計七九、〇〇〇円の費用を支出したが、これは本件家屋の使用収益に必要な修繕を施こすための費用で、賃貸人の負担に属するべきものであるから、この必要費償還請求権と本件延滞賃料債権とを対当額で相殺すると、控訴人には延滞賃料がないことになる、また賃貸人の修繕義務の履行は賃料支払いと同時履行の関係にあるが、被控訴人は右修繕義務を履行しなかつたから、控訴人の賃料債務は履行期に達していない旨抗弁した。

判決は、控訴人が本件家屋補修のため、昭和三三年一二月から昭和三七年二月までの間、勝手土台入替、流取替、柱根つぎ、下見板張替、天井手なおし、畳取替、ガラス戸入替等に合計一三二、七〇〇円を支出したことを認定したが、控訴人主張の抗弁については次のように判示してこれを排斥した。曰く、

「ところで、民法第六〇六条によれば賃貸人は賃貸物の使用収益に必要な修繕をする義務を負い、同第六〇八条第一項によれば、賃借人が賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出した場合は、賃貸人に対しその償還を請求できる旨規定されている。これは、双務契約たる賃貸借契約において、賃貸人が賃料を受取る反対給付として賃貸物を完全に使用収益させる義務を負うところから生ずる結果である。そして賃貸人の修繕義務は修繕をなすことが可能であつて、かつその必要ある場合にのみ発生するもので、また公租公課の負担等を考慮し賃料に比して不相当に過大な費用を要する修繕は法律上不能と解すべく、賃料が地代家賃統制令によつて人為的に強く抑制され低廉である場合には、賃料の反対給付として賃貸人が負担すべき修繕義務も右に応じて軽減されるべきことは公平の理念から当然で、このような場合修繕料の負担について一般には賃貸人と賃借人がその都度協議して決めていることは顕著な事実である。いまこれを本件についてみるに、前記争のない事実のとおり、控訴人が本件家屋を被控訴人より賃借した昭和三三年六月二六日以来契約解除の意思表示のなされた昭和三七年七月二日までの間の賃料は概ね合計金四八、〇〇〇円で、この間に控訴人が支出した修繕費は前記のごとく合計金一三二、七〇〇円であつて、賃貸人の収得しうる賃料を遙かに超過しているのみならず、個々の支出額も賃料額に比し過大に失しているので、到低これを双務契約上の賃貸人たる被控訴人が法律上なしうる修繕義務の範囲に属する必要費と認めることはできない。控訴人の主張するように、本件家屋の建築に要した投下資本が回収されており、被控訴人が本件家屋を買い受けた代金が金二〇万円を上廻るものでなかつたとしても、以上の認定に何らの影響はない。」

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